ユーパレス弁天施設内には、物産館の他、園芸館もございます。
色鮮かな「お花」「鉢植え」等、多数準備しております。
母の日(5月8日)には、是非、お立ち寄りいただき、
園芸館のお花をプレゼントしてみてはいかがでしょうか?
母の日というと、必ず思い出すお話があります。
「龍の子太郎」のお話しを皆さんご存知でしょうか?
図書館司書資格を有し、数千冊の書評を書いた中でも、
特に私の印象に残っているお話で、
毎年、自宅書庫の奥から、母の日に手に取る度に
何度読んでも不思議と涙が溢れてしまいます。
貧しい山村に、おばあちゃんと太郎という男の子が住んでいた。
太郎には鱗(うろこ)のかたちをした不思議なあざがあり、龍の子太郎と呼ばれていた。
太郎は怠け者で、毎日山に登って遊んでばかりいた。
その山であやという少女と仲良くなった。
ある日、おばあさんに孫の太郎は両親の話を聞かされる。
それによると、太郎の生まれる前に父が死に、
山で飯当番として働いていた身重の母は、なぜか龍に変わってしまった。
そして龍は子供が生まれたら育てて欲しいと告げると、沼に沈んだ。
それから三ヶ月たち、川から流れてきた赤ん坊をおばあさんは拾い上げた。
赤ん坊は龍の目玉二つをしゃぶって育ち、かわりに盲目になった龍は遠い北の国の湖に去ったという。
龍の子太郎は母の生存を知って喜び、母を尋ねて旅に出ることにした。
しかし、あやが赤鬼にさらわれ、先にあやを助ける旅に出ることにした。
まず、天狗さまに百人力を授けてもらい、赤鬼の次に黒鬼をこらしめ、あやを助けた。
ずっと黒鬼に苦しめられてきた山の麓の村人たちも太郎に感謝した。
麓の村は土地が広く作物が豊富で、太郎とあやはたくさんご馳走になった。
おいしい白米のおにぎりを、太郎は山村の人びとにも食べさせたくなって泣いた。
次の朝、黒鬼が飼っていた魔法の白馬にあやを乗せて故郷に帰すと、龍の子太郎は母を尋ねて北へ向かった。
九つの山を越えて母がいる湖に着くまでには、困難なことが幾つか待ち受けていたが、太郎は知恵と勇気で切り抜けた。
しかし、激しい吹雪にはかなわず、ついに倒れて雪に埋まってしまう。
やがて雪がやんで夜が明け、空のはてから飛んできた魔法の白馬とあやに、太郎は命を助けられた。
そして、太郎は白馬にあやと乗って空を飛び、北の湖に着いて龍になった母とやっと対面した。
太郎は母龍に、みんなと一緒に暮らそうと話し、なぜ龍になったのか、理由を聞いた。
すると母龍は、妊娠中で体の具合の悪い時に飯当番になり、好物のイワナを三匹とも一人で食べてしまい、
古い言い伝えどおり龍になったという。
母龍が自分ばかり責めるので、食物がもっと豊富にあれば、こんなことにはならなかったのにと、太郎は悔しがった。
貧しい山の暮らしの悲しさが、ふつふつと龍の子太郎の胸に込み上げ、
腰を曲げて豆をまきながら歌う、おばあさんの、「一粒は千粒になあれ」、と祈るような歌声まで、耳にはっきりと蘇ってきた。
そこで、太郎は母龍に、この湖の水を海へ流して、広い田んぼを作りたいと言った。
その言葉に母龍は息子の願いに力を貸し、そのために自分が死んでもいいと決心した。
母龍は太郎を首に乗せ、山を崩すのに悪戦苦闘した。
今は空の雷さまの弟子になっている赤鬼に援軍を頼み、
山の口が割れると、次に母龍が山を崩し、
山の裂け目から流れる濁流に乗り、山を切り開き、岩を割り、森を押し流して、
とうとう北の海へ踊り出していった。
やがて、大きな湖の底によく肥えた土地が出現した。
北の海辺に立った太郎は、傷だらけの龍の首を抱き、お母さんほど立派な人はいないと言って泣いた。
そして傷口を手でさすり、涙が龍の目にかかったとき、その姿はみるみる優しい女の人に変わり、目が開いた。
太郎は母が願っていたより強く、賢くなっていた。
その勇気が母を救ったのである。
広くて新しい土地に人々が集まり、稲が実った。
やがて龍の子太郎はあやと婚礼の式を挙げた。
-おわり-
幼少の頃、この話を聞くたびに、地元の地形と一致することから、
九重山を越えて母龍に会いにいった太郎の姿と、
阿蘇の外輪山を切り開く母龍の姿、
そして熊本平野(白川・緑川・坪井川)に至る広い大地と、
その豊かな実りなど、様々な想像の翼を広げたものである。